2016年に発生した熊本地震によって被災した阿蘇神社。楼門を初めとする、国指定重要文化財6棟が甚大な被害を受けました。
被害状況としては、楼門は全倒壊、三の神殿は損壊、一の神殿、二の神殿、神幸門(みゆきもん)、還御門(かんぎょもん)は部分損壊。
とくに大きく被災したのが、江戸時代末期に建てられた『楼門(ろうもん)』。阿蘇神社の楼門は日本三大楼門の一つなのですが、激震で完全に倒壊。

阿蘇神社 楼門
阿蘇神社 楼門 保存修理
熊本地震で全倒壊した『阿蘇神社 楼門』の復旧(保存修理工事)のため、3階構造の作業棟が組み上げられました。国指定重要文化財の保存修理工事は極めて珍しく、阿蘇神社の楼門を含めわずか数例しかありません。
阿蘇神社 楼門の保存修理工事は、文化財建造物保存技術協会の設計・監理のもとで実施されています。
1期工事
2016年10月から2019年3月までに、楼門の解体保管・調査と他の国指定重要文化財5棟の部分修理工事を終了。
全倒壊した楼門から約11,000点に及ぶ部材を回収し、極力再利用することを前提に、再利用できる部材、部分的に補修を要する部材、代替が必要な部材に分類のうえ、部材の補修と代替部材の製作を進めました。再利用率は72%に達しています。
2期工事
2019年4月に着手した楼門の復原工事では、初めに、施工ヤードを覆う高さ24.1m、幅22.5m、奥行25.3mの素屋根を架設。
その後、再築に取りかかり、工程的には20年7月に基礎部、21年4月に1階の柱・梁、21年11月に1階小屋組と順に仕上っていき、3月末までに8,000点近くの部材の再築を終えた。
保存修理工事の最大の難点は、従来の部材による骨組を復原しつつ、震度7の地震に耐えられるように元はなかった耐震鉄骨を骨組の中に納めること。
耐震鉄骨と骨組の干渉部については、既存部材の必要最小限の移動とそれに対応した新たな組み合わせによる解消を原則として対応。また、保管していた木材の多くは荷重から解放されて変形しているものの、基本的には木材に加力して元の組み合わせを実現することを原則とした。
こうした対応が難しい場合、都度、文化財建造物保存技術協会と協議し、限定的に部材に加工を加えることで、文化財としての価値を棄損しないように対応。
楼門 特別公開:2023年3月
阿蘇神社の楼門は江戸時代末期に造営され、日本三大楼門の一つ。
阿蘇神社の建築物は約2,300年の歴史があります。それゆえ『国指定重要文化財』といった文化財保護法に基づいた修復が必要なため、復旧には様々な課題がありましたが、熊本地震発生から7年目にして楼門の復旧工事が9割ほど完了しました。
楼門を覆っていた復旧作業棟は今後解体されますが、ふだん見ることができない高さや位置から楼門が詳細に見れるため、2023年3月5日から12日までのあいだ期間限定で一般公開しました。