2016年10月8日爆発的噴火[阿蘇中岳火口]

【熊本地震後】阿蘇火口観光の現状と今後

阿蘇中岳火口見物の状況
〈更新:2017年3月28日〉
2017年2月7日、阿蘇火口の火山活動が落ち着いているとして、噴火警戒レベルを最低の【1】へと引き下げられました。

警戒レベルが【1】であれば活火山の活動をじかに体験できる『火口見物』が許可されるのですが、爆発的噴火の後、現地はほとんど手付かずの状態だったため、撤去作業や安全対策に時間が必要です。春から本格的な観光シーズンをひかえ関係者は頭をかかえています。

36年振りの噴火

1979年9月6日、阿蘇中岳火口が爆発的噴火を引き起こして大量の噴石が観光客を直撃。死者3人、重軽傷者16人を出す災害となりました。噴火の被害者は火口北側にある『仙酔峡ロープウェイ』からアクセスした観光客。それ以降は爆発的噴火はありませんでした。

噴火と経緯

2016年10月8日爆発的噴火[阿蘇中岳火口]
2016年10月8日
午前1時46分に爆発的噴火をした阿蘇中岳第1火口。噴火の規模が大きかったことから、噴火警戒レベル【3(入山規制)】へ引き上げられました。〔当時の情報:【阿蘇山噴火】草千里・阿蘇山上の観光規制

噴火は深夜だったため幸いにも観光客への被害ありませんでした。しかし、今後の噴火状況が、どのように変化するか予測ができないため、噴火当日は阿蘇登山道を閉鎖して草千里をふくむ阿蘇山上への立入規制を実施されました。

2016年10月9日
10月8日の噴火以降、目立った火山活動がなく落ち着いたようすなので、火口からおおむね2km圏内を立入禁止区域に指定。草千里から阿蘇山上へつづく道路を封鎖して進入禁止にしました。

2016年12月20日
噴火警戒レベルは【3 → 2】へ引き下げられましたが、阿蘇火山防災会議協議会は、山上広場一帯の安全が確認されるまでは二次規制を継続を決定。

2016年12月21日
山上広場一帯の安全が確認されたため、草千里先の道路通行止を解除。

2017年2月7日
噴火警戒レベルが【2 → 1】へ引き下げられましたが、火口周辺の施設や設備などの整備がととのうまで、火口周辺の概ね1km範囲内の立入規制継続を決定。

阿蘇火口周辺の復旧

噴火警戒レベルが【1】へ引き下げられて約1ヶ月が過ぎました。その間にも九州地方環境事務所では、火口周辺の状況を調査しています。火山活動は落ち着いていますが、火口周辺の復旧整備は問題山積です。

火口周辺の修復

大量の火山灰が堆積する[火口見物広場付近]
まずは、火口見物に観光客がもっとも集まる火口縁から約100メートル南の火口広場には、噴火時に噴出した火山灰と噴石が避難壕を埋めるように大量に堆積しており、これらの除去には多額の費用と多くの作業時間を必要としています。
阿蘇山公園道路に落ちた噴石
まずは『阿蘇ロープウェイ火口西駅』周辺までの作業通路を確保するべく、1.3キロメートル離れた阿蘇山上広場からつづく市道(阿蘇山公園道路)の噴石除去と道路補修に着手しています。

また爆発で噴出した噴石と火山灰は、火口広場(駐車場)以外にも広範囲に多く積もっており、火口広場だけでも約3300立方メートル以上と非常に大量。そのため、当面は広場西側斜面に仮置き場を設置して除去作業を進めるそうです。

ここまでの状況を考えると、春の観光シーズンに間に合わせるのは無理なのがわかります。

火山ガス検知器

火口縁周辺の管理は国が管轄しています。まず火口見物広場に工事用車両の駐車場スペースが確保できしだい、火山ガス検知器の状態を把握して、検知器の正常可動へむけて調査・作業に入ります。
噴火で破損した「火の国橋」[阿蘇火口広場]
しかし、ここにも障害が待ち受けています。火山ガスの濃度データを検知器から送り出すのには光ケーブルを利用しているのですが、光ケーブルを通すための『火の国橋』が大きく損傷しているため、設置された検知器が良好でも情報を受けると事ができません。この問題に対して九州地方環境事務所からは「現段階で復旧時期は見通せない」とのことで、短期間の復旧は見込めないようです。

噴火を伴わない火山ガスによる事故は、間近であれば〈1997年11月23日〉に死者2名をだしているため、火口見物を実現するには、火山ガス濃度のリアルタイム監視は絶対条件でしょう。

現在、この問題を早期に解決するため、環境省・県などを含めた約20人の検討チームを発足。設置型ガス検知器の完全復旧前に、携帯型検知器の所持による安全対策をしながら、一部で火口見物が再開できないか可能性を探っています。

火口縁の避難壕

火口見物広場周辺には、火山爆発時の緊急避難のために避難壕が複数設置してあります。昨年の爆発により避難壕のほとんどは火山灰に埋もれており、また噴石により損傷を受けている壕もあるため、調査によっては補修・建直しが必要になるでしょう。
噴火で破損し火山灰に埋まる避難壕[阿蘇火口広場]
また、調査などの行程に入る前に、ます周囲の火山灰と噴石の除去が必要なため、こちらも安心な状態にするには時間がかかりそうです。

阿蘇火口見物で避難壕の重要性を語る必要もないでしょうが、1958年6月24日の噴火では、死者12人を出す惨事が起きています。この噴火では、鉄筋コンクリートの屋根に直径50~100センチの穴が開き、直径15ミリの鉄筋も破断されたそうです。

突如噴火が起きたばあい、避難壕が生還するための命綱となるため、正常な状態で設置されなければなりません。

阿蘇ロープウェイ

運行中のロープウェイ[阿蘇ロープウェイ]
さきほど説明したとおり、火山灰の除去作業は火口縁周辺の火口見物広場あたりが優先されます。しかし、噴出物の撤去移動作業によるダンプカーなどの工事車両の往来や、駐車場の整備などが必要なため、短期間で観光客の車両が『阿蘇山公園道路』を利用して火口付近に上がるのは難しそうです。

そこで浮かんでくるのが、阿蘇山上広場と火口付近をむすぶロープウェイの活用です。

ところが、ここにも障害が待ち構えています。

阿蘇ロープウェイの運行は、阿蘇の火山活動と密接に連動しているため、阿蘇火口周辺への立入禁止規制が出されると運休になってしまいます。

ロープウェイは特殊に製造されたワイヤロープを使用するため大変高価。特に運用していないワイヤロープは、偏った力がワイヤーに悪影響をあたえるため、ゴンドラが止まっていてもメンテナンスを必要とします。ここに2016年熊本地震が発生して阿蘇登山道が崩壊。整備メンテナンスができなくなりワイヤーロープが一式ダメになりました。
噴火で損壊激しい『ロープウェイ火口西駅』[阿蘇ロープウェイ]
また、阿蘇火口に近い『ロープウェイ火口西駅』は噴火による施設損傷や、長期間運用していないためロープウェイ関連機器が故障しており、多額の修理費用と修理期間を必要とします。

まとめ

熊本地震発生から、もうすぐ1年。火山活動も落ち着いて来たところで阿蘇観光の目玉でもある火口見物を、たくさんの方々に楽しんでもらいたいのですが、火口周辺の現状は以上のとおり難題がたくさんあります。

ただ阿蘇山上には、火口以外にも魅力的なパノラマビューや美しい草千里ヶ浜があります。最近は草千里周辺の山への登山〔【阿蘇五岳】杵島岳、烏帽子岳の登山許可情報〕もできるようになりました。観光施設は地震前とかわらないように営業しています。
地震で斜面崩落[阿蘇・烏帽子岳]
まだ地震の爪痕がのこる阿蘇一帯ですが、そんな景色が観れるのも今だけ。目に映るものは日々刻々と変化しています。

追加情報:2017年3月28日

阿蘇火山防災会議協議会は、携帯型ガス検知器などの危険を察知できる機器を所持することで、少数限定の火口見物ツアーを実施する計画を検討していると発表がありました。

現在、阿蘇火口周辺では火口駐車場や安全柵の復旧が進んでおり、少しずつですが阿蘇火口の観光再開へ向けて進んでいます。しかし、阿蘇火口周辺の完全な復旧には半年以上かかるため、火口見物再開には一定の条件を付けて検討しています。

また、活火山の見物においては完全な安全は保証できないため、火口見物希望者にはリスクよる自己責任に同意してもらって参加可能にするようです。そのほか、ガスマスク装着して山上監視員と同行することで火口見物ができる案が上がっています。

まずは、阿蘇火山ガス安全対策専門委員会の審議を経て、試験的な実施を決めるとアナウンスしています。今後の展開に期待ですね。